読書逍遥

読書逍遥第117回 読書逍遥『文明の庫(くら)』芳賀徹著(その3)

冨田鋼一郎

『文明の庫(くら)』芳賀徹著(その3)

「引力の事」

福沢諭吉『窮理図解』より

「水の事」「風の事」「雲雨の事」「雹雪露霜氷の事」に続いて「引力の事」の章の紹介がある。

「空々茫々たる広き天に、数限もなき星の列なりて、開闢の始めより今日に至るまで、其行列を乱ることなきは、皆引力の致す所なり、宇宙こそ洪大とやいはん、無辺とやいはん」と、ほとんどパスカル的感銘をはらんだ場にまで読者を導いてゆく。

漱石『猫』でも引力の話が出てくるので、ニュートン万有引力は既に明治の世では知られていた。

その半世紀も前1830年代、文政の時代には崋山が興味深い「地球図」を描いている。この時期に地球には引力が存在していることをこれほど明快に表現したものを知らない。

宇宙開闢以来、138億年にわたって引力という物理学の法則が貫徹している。

[渡辺崋山書簡「地球図」]

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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