読書逍遥

第31回『伊能忠敬の日本地図』渡辺一郎

冨田鋼一郎

『伊能忠敬の日本地図』渡辺一郎

図書館で興味深い本に出会った。
伊能忠敬の実地測量の旅と地図の内容、世界に散逸した複製図再発見の旅など忠敬の全貌に迫る。

著者は65歳で第一線を離れてから、20余年忠敬研究に専念する。本書内容もさることながら、著者の晩年の過ごし方に興味惹かれる。

きっと自身の晩年の過ごし方を忠敬のそれに重ねていたのだろう。
興味あることに没頭していたから、余生を退屈と感じることはなかったのではないか。
一事に勤しむのではなく、あれこれつまみ食いすることはいけないのか、命を燃焼するとはどういう事なのかも考えさせられた。

もう一つ、実績作りのための無味乾燥な学術論文とは異なり、好きなことに取り組んでいることの感動が先にある。
行間に感動を見つけるのが楽しい。

渡辺一郎(1929-2020)

91歳。電電公社を51歳で退職。65歳で会社経営を引退。
このころから伊能忠敬研究に取り組み、伊能忠敬研究会を結成。
「伊能ウオーク」などのイベントを主催する一方、アメリカ議会図書館で伊能大図を大量に発見するなどした。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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