読書逍遥第203回 『運び屋として生きる』石灘早紀著
冨田鋼一郎
有秋小春
図書館で興味深い本に出会った。
伊能忠敬の実地測量の旅と地図の内容、世界に散逸した複製図再発見の旅など忠敬の全貌に迫る。
著者は65歳で第一線を離れてから、20余年忠敬研究に専念する。本書内容もさることながら、著者の晩年の過ごし方に興味惹かれる。
きっと自身の晩年の過ごし方を忠敬のそれに重ねていたのだろう。
興味あることに没頭していたから、余生を退屈と感じることはなかったのではないか。
一事に勤しむのではなく、あれこれつまみ食いすることはいけないのか、命を燃焼するとはどういう事なのかも考えさせられた。
もう一つ、実績作りのための無味乾燥な学術論文とは異なり、好きなことに取り組んでいることの感動が先にある。
行間に感動を見つけるのが楽しい。
91歳。電電公社を51歳で退職。65歳で会社経営を引退。
このころから伊能忠敬研究に取り組み、伊能忠敬研究会を結成。
「伊能ウオーク」などのイベントを主催する一方、アメリカ議会図書館で伊能大図を大量に発見するなどした。