作品・本・人物紹介

「冬青 小林勇」(1903-1981)の魅力について

冨田鋼一郎

冬青小林勇は、いつの間にか私の心の中に棲みついてしまった人。折に触れて会話をする。心に刻んだ彼の言葉が、どれだけ自分を励ましてくれたことか。

彼の本に出会ったのは、いまから30年も前。『惜櫟荘主人  一つの岩波茂雄伝』だった。

実際に立ち会った者でなければ書けない優れた評伝。生き生きとしていて感銘を受けたのがはじまり。それから書籍を読み継いでいった。

① 個性あふれる達意の文章。自分の思いをありのままに書いているので、読者は自分だけに語りかけられているような気持ちになる。

② 幸田露伴や岩波茂雄らの人物の本質を捉えた、生き生きとした評伝群。採りあげた多くの人物は、筆者が日ごろ尊敬している昭和を代表する知識人、芸術家などで、昭和人物辞典にも匹敵する。読後すがすがしい気持ちになる。

③ 暖かい人柄が滲み出る絵画作品(画号は冬青)。 アマチュアの独学の真剣勝負。

④ 己に厳しく、強い反骨精神。権力に遠い人々への優しいまなざし。

⑤ 一人でいても心豊かな内面生活。

来年2023年は、小林勇の生誕120年にあたる。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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