若き蕪村の大和絵修業の証
冨田鋼一郎
有秋小春
冬青小林勇は、いつの間にか私の心の中に棲みついてしまった人。折に触れて会話をする。心に刻んだ彼の言葉が、どれだけ自分を励ましてくれたことか。
彼の本に出会ったのは、いまから30年も前。『惜櫟荘主人 一つの岩波茂雄伝』だった。
実際に立ち会った者でなければ書けない優れた評伝。生き生きとしていて感銘を受けたのがはじまり。それから書籍を読み継いでいった。
① 個性あふれる達意の文章。自分の思いをありのままに書いているので、読者は自分だけに語りかけられているような気持ちになる。
② 幸田露伴や岩波茂雄らの人物の本質を捉えた、生き生きとした評伝群。採りあげた多くの人物は、筆者が日ごろ尊敬している昭和を代表する知識人、芸術家などで、昭和人物辞典にも匹敵する。読後すがすがしい気持ちになる。
③ 暖かい人柄が滲み出る絵画作品(画号は冬青)。 アマチュアの独学の真剣勝負。
④ 己に厳しく、強い反骨精神。権力に遠い人々への優しいまなざし。
⑤ 一人でいても心豊かな内面生活。
来年2023年は、小林勇の生誕120年にあたる。