書評紹介(2024.11.24)朝日『ニューヨーク精神科医の人間図書館』ナ・ジョンホ著
冨田鋼一郎
有秋小春
遊印 「溌墨生痕」(はつぼくせいこん)
(白文方印)
21mm x 22mm
筆をもって心を込めて生き生きと描いておれば、それが自分の生の証しである。
蕪村の人生後半で使用した唯一の遊印。
晩年の傑作が多いいわゆる「謝寅(しゃいん)書き」時代まで用い続けた。
国宝の「十宜図」など自信作にこの遊印を押した。
学んだことを自家薬籠中の物とすべく貪欲に画嚢・詩嚢に蓄えていこう。真摯に画業に打ち込む蕪村らしい自戒とストイックな気概を込めた文句である。
蕪村が生涯に使用した遊印は次の四顆のみ。
⭕️関東遊歴時代 「男子生有四方志」
⭕️丹後時代 「山水自清言」「丹青不知老至」
⭕️上洛後から晩年まで 「溌墨生痕」
黒い影印は、講談社『蕪村全集』印譜に掲載されているもの。