渡辺崋山筆「俳人肖像真蹟」その4「秋色」
冨田鋼一郎
有秋小春
ふるさとの山深くして友の家に雨の一日を来て泊りけり
みんなみを塞ぎて立てる高山に霧立ちさわぎ雨止みまた降る
玉屋さんのたんぽゝの団扇の出来ばえのいかゞあらんか見たきもの也
たんぽゝは野の花なれど葉も花も知的に纏りわたしは好きなり
たんぽゝの綿毛の球はたまたまにたま屋団扇に描かれけるかも
たんぽゝの花露草の花どくだみの花などわたしの好きな花也
玉屋さんの屋上の庭に鉢植ゑのたんぽゝ露草どくだみいかゞ
玉屋さんの奥さんも多少野性ありてこのきりゝと文化的知性あり
昭和31年7月1日の消印あり。
備中笠間市から投函
歌人。本名清水秀。号は他に匕舟、比舟、比安。詩・書・画の三芸に秀で、今良寛といわれる。