骨董品

蕪村筆 芭蕉翁座右銘「ものいへば」画賛 桜板木 史料

冨田鋼一郎
H51.0 x W24.0 x T1.8 cm

   座右之銘
  人の短をいふ事なかれ
  己が長をとく事なかれ
 物いえば唇寒し秋の風
         芭蕉翁

「蕉風復興運動」。芭蕉没後80〜90年になる安永・天明期に「芭蕉にかえれ」の機運が最高潮に達した。
芭蕉を敬慕する蕪村は、一門とともに京都左京区一乗寺金福寺に芭蕉庵を再興した。金福寺は蕪村の墓所でもある。

蕪村が没する天明三年(1783)には芭蕉百回忌追善取り越し法要(10年も早く)が行われた。
桜の板木はこの時期に彫られ、大量に刷られて芭蕉復興運動に一役買った。これが蕪村の真筆かどうかはこの際たいした意味はないだろう。

彫り師の手早い手さばきが板木から伝わってくる。実際に刷って、240年前の往時を偲んでみた。

『芭蕉図録』所収の芭蕉真跡には「ものいへば」の句は、「ものいはでただ花を見る友もがなといふは何がし靄亀が句なり。わが草庵の座右にかきつけけることをおもひいでて」の前書で認められている。

『校本芭蕉全集』発句篇解説より

前書きの「人の短をいふ事なかれ己が長をとく事なかれ」は、『文選』の「無道人之短無説己之長」による。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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