東ドイツ記念通貨5マルク白銅 未使用ロベルト・コッホ生誕125年記念
冨田鋼一郎
有秋小春
源氏物語を読み侍りて思へる事ども
先達の某は源氏物語を評して此書は通編仏経にすがりて陰にその玄理を説きたるものとはいへり。我この物語を読みて思へらく、論者深く惑へり。さるはまことに作者の意を知らざるものヽ言なり。・・唯言へ、源氏物語は本朝に双なき人情小説の極粋至情なるものなり。かの浅薄なる群言のごときは安ンぞ取るに足らむや。もし紫式部が観世音菩薩の化身なることをして事実ならしめば、この物語は洵に一部の経文ならむかし
六月二十九日稿 国文学1年
尾崎徳太郎
尾崎紅葉が国文科1年生23歳(明治23年1890)の時に書いたレポート原稿である。学生当時、すでに達筆であったことがわかる。このような学生時代の草稿が残っていることは稀なことだ。
岩波書店『紅葉全集』第12巻「書簡・逸文・未定稿・雑篇・補遺」所収
小説家。名は徳太郎。号は「縁山」「半可通人」「十千万堂」「花紅治史」など。物語の巧みさと艶麗な文章で、圧倒的人気を獲得、泉鏡花・小栗風葉・柳川春葉・徳田秋声らの逸材を出した。作「多情多恨」「金色夜叉」など。