骨董品

尾崎紅葉筆遺稿「蝉花の事」幅

冨田鋼一郎
H22.0 x W91.0 (cm)

蝉花の事 紅葉
去年の事であつた。麦人子が物好に奇題のみを取つて詠んだ十数句を示した中に、蝉花(せみばな)と云ふのが有つた。どんな物で、又何の書に出て居るのかと訊ねると、奇淵の著はした捨遺四季部類、一名を新季寄と云ふのにあるとの事で、早速其書を持つて来た。自分は始めて見るのであつたが、嘗て月並のひねりやから聞いた時鳥の落し文などといふのも、是に出て居るので、或は龍登る(二月の生類の部で、龍の天昇は凄い)又は、怪むべき事ではないが、業平忌であるの、雁瘡であるのと、実に希有なものを好くも寄せるある。其中の蝉花であるから、是又一通りで解(わか)るではない、成程図入に成つて、註も加へてある。・・・・

原稿6枚半

明治34年9月10日「俳藪」第2号所収。『紅葉全集』第9巻「俳句・初期詩文」384ページ

尾崎紅葉(おざきこうよう1867-1903)

小説家。名は徳太郎。号は「縁山」「半可通人」「十千万堂」「花紅治史」など。物語の巧みさと艶麗な文章で、圧倒的人気を獲得、泉鏡花・小栗風葉・柳川春葉・徳田秋声らの逸材を出した。作「多情多恨」「金色夜叉」など。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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