読書逍遥

読書逍遥第204回 『蕪村と漢詩』成島行雄著

冨田鋼一郎

『蕪村と漢詩』成島行雄著

蕪村の芸術は、唐土(もろこし)の文芸によって育まれたと言っていい。憧れにも似た気持ちで漢書を読み漁ったことが見てとれる。

上田秋成が蕪村追悼に寄せた句に、

⭕️かな書きの詩人西(せい)せり東風吹て 
           無腸(秋成)

蕪村の句は漢詩を仮名書きにしたようだと言う。

読み込んだのは、陶淵明、王維、李白、杜甫、白楽天、蘇東坡、孟浩然、杜牧など

蕪村が漢詩から学んだこと
○詩そのものの世界
○表現としての言語

萩原朔太郎が指摘しているように、「漢詩の本質的風格とも言うべき直截で力強い、筋骨質の気概表現」を学んだ俳人は少ない。

⭕️花茨故郷の路に似たるかな
(陶淵明)

⭕️冬鶯むかし王維が垣根哉(王維)

⭕️遠近(おちこち)おちこちと打きぬた哉(李白)

⭕️花を踏し草履も見えて朝寝かな(白楽天)

⭕️春の夜や宵あかつきのその中に(蘇東坡)

蕪村の真骨頂は、唐土に畏敬の念を抱きつつも、対峙する日のもと意識を失わなかったこと。唐土はあくまで素材、日のもと独自の気術を創った。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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