読書逍遥第226回 『モンゴル紀行』(その3) 街道をゆく5 司馬遼太郎著
冨田鋼一郎
有秋小春
蕪村の芸術は、唐土(もろこし)の文芸によって育まれたと言っていい。憧れにも似た気持ちで漢書を読み漁ったことが見てとれる。
上田秋成が蕪村追悼に寄せた句に、
⭕️かな書きの詩人西(せい)せり東風吹て
無腸(秋成)
蕪村の句は漢詩を仮名書きにしたようだと言う。
読み込んだのは、陶淵明、王維、李白、杜甫、白楽天、蘇東坡、孟浩然、杜牧など
蕪村が漢詩から学んだこと
○詩そのものの世界
○表現としての言語
萩原朔太郎が指摘しているように、「漢詩の本質的風格とも言うべき直截で力強い、筋骨質の気概表現」を学んだ俳人は少ない。
⭕️花茨故郷の路に似たるかな
(陶淵明)
⭕️冬鶯むかし王維が垣根哉(王維)
⭕️遠近(おちこち)おちこちと打きぬた哉(李白)
⭕️花を踏し草履も見えて朝寝かな(白楽天)
⭕️春の夜や宵あかつきのその中に(蘇東坡)
蕪村の真骨頂は、唐土に畏敬の念を抱きつつも、対峙する日のもと意識を失わなかったこと。唐土はあくまで素材、日のもと独自の気術を創った。