読書逍遥第178回 『国境と人類』ジェームズ・クロフォード著
『国境と人類』ジェームズ・クロフォード著
副題 文明誕生以来の難問
原題 THE EDGE OF THE PLAIN:
How Borders Make and Break Our World
人間は古来、さまざまな境界を設けて、自らを他者と隔ててきた
「万里の長城」「ハドリアヌスの長城」「エルサレムの嘆きの壁」「鉄のカーテン」「ベルリンの壁」「ガザの天井のない壁」どが思い浮かぶ
壁は初期の目的が崩れると、最終的には世界遺産となって役割を終えていく
難民の大量発生。これほど人の自由な移動が困難な人々を目の当たりにすると、パスポートを所持して国境を自由に越えることが出来るのは、決して当たり前なことではなく、それは特権といえる
本書は、著者が直に訪問した地で、決死の国境超えを試みる人々の取材報告
⭕️セウタとメリリャ
(スペインのモロッコ側飛び地)その歴史は1492年レコンキスタ完了まで遡る
⭕️ランペドゥーサ島(チュニジア沖のイタリア領)
○トルコとギリシャ国境
⭕️アルプス山脈エッフィー溶ける氷河国境
○ ソノラ砂漠(米アリゾナ州メキシコ国境)
⭕️「中国網路主権」
中国インターネット空間を壁で管理
データ通信の流れを、「国家の安全と国民の利益を守るため」、法を遵守し、自由で秩序正しい情報だけを認める
⭕️細胞膜を突き破るコロナウイルス
帯文
「難民、パンデミック、気候変動……すべては国境問題につながる。人類にとって「国境」とは何か。古代の戦跡から、パレスチナ、トランプの壁、解ける氷河まで、歴史的転換点の現場で考える」
(序文)
20世紀21世紀の世界に生きている私たちの大半は、自分が国民国家の一員であることを当たり前のこととして受け入れ誰もがそうなのだと信じている。
しかし、今住んでいる国に自分の居場所がないと感じる人は、地球上に大勢いる。
この数十年間に、世界各地で次々に生じるデビューは、一見無縁のようでいて、その根底にはボーダーと言う共通の問題がある。
ボーダー、内と外の境に着目して、過去から現代への旅を通して、国境とは何かを理解しようとする試み、国境とは何か、境界がいかに作られ、動き、どう捻じ曲げられ、断ち切られる一方となっているか調べることにしたい。