読書逍遥第147回 『地球曼荼羅 世紀末を歩く』森本哲郎著 (その2)
冨田鋼一郎
有秋小春
副題 イタリア発、アートとケアの物語
もてなしのアートに満ち溢れているイタリアのホスピス。「死はスイートなもの」という彼らの感覚。人生を丸ごと味わおうとするイタリア人の感性とはどのようなものだろうか。
アートで終末医療を彩るという美学やケアの思想を掘り下げて紹介するとともに、それを支える市民や地域共同体のあり方を克明に描く。
末文)
芸術と医術の距離は近づきつつあるが、アートとメディスンの関係はやはりまだ遠いことを、改めて実感する。医療の現場とわれわれ美術関係者が口にする「いのちのやりとり」の間には、まだ埋め難い隙間があることをみとめざるをえない。
☆☆☆
イギリスへの語学留学からイタリアのホスピスとの出会いへ。体験と思索から紡ぎ出した本。このような偶然の積み重ねで人生は彩られていく。