読書逍遥

読書逍遥第103回 『俳諧随筆 蕉門の人々』柴田宵曲著

冨田鋼一郎

『俳諧随筆 蕉門の人々』柴田宵曲著

其角、嵐雪、惟然、凡兆、去来、丈艸、史邦、木導、一笑。芭蕉門下の九名の俳人を取り上げている。

森銑三の解説文にある「祖述ではなく創作である」は、至言である。

☆☆☆☆

『蕉門の人々』には俳諧随筆という冠称が附してある。序文には、「ただ作品を通して直接その人の面目を窺おうという、おぼつかない試みの一に過ぎぬ」と断ってある。

しかしながら本書の著者は古句を心解し、味読することにおいて、いわゆる研究家を任ずる人びとの到達し得ない世界に住している。おぼつかない試みというのはもとより遜辞で、著者の態度はあくまでも手堅く、また手強い。

作品そのものを仲介として、蕉門の諸作家に肉薄し、膝詰談判に及ぼうとする。そこに息の詰まりそうな緊張した気分さえ伴っている。

本書の内容は、祖述ではなくて創作である。随筆とは銘打ってあっても、ただの漫文や雑文とはわけが違う。全体が渾然とした作品に成っている。その点に及び難い感を抱かせられる。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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