読書逍遥

第61回『炭太祇(たんたいぎ)の句 その1』

冨田鋼一郎

炭太祇(1709-1771) は、蕪村の盟友。
蕪村が蕪村になったのは、太祇らとの相互研鑽の賜物だ。

山吹や葉に花に葉に花に葉に 太祇

こんなリズムの良い、楽しい句があった。山吹の枝ぶりの特徴をよく捉え、一読忘れ難い句になった。山吹はもうすぐ。

山吹や腕さし込で折にけり 太祇

山吹を折ろうすれば、花を傷めぬように、どうしても腕をそっと差し込むしかない。

蛇笏の芒の句が思い浮かぶ。

おりとりてはらりとおもきすすきかな
             飯田 蛇笏

昨日、新大久保の教会前でチューリップを見つけた。

チューリップ喜びだけを持ってゐる 綾子

ふらこゝの会釈こぼるゝや高みより

な折そと折てくれけり園の梅

扨(さて)永き日の行方や老の坂

川の香のほのかに東風(こち)の渡りけり

ふりむけば灯とぼす関や夕霞

やぶ入の寐るやひとりの親の側(そば)

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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