読書逍遥第152回 『思想の冒険家たち』森本哲郎著 1982
冨田鋼一郎
有秋小春
炭太祇(1709-1771) は、蕪村の盟友。
蕪村が蕪村になったのは、太祇らとの相互研鑽の賜物だ。
山吹や葉に花に葉に花に葉に 太祇
こんなリズムの良い、楽しい句があった。山吹の枝ぶりの特徴をよく捉え、一読忘れ難い句になった。山吹はもうすぐ。
山吹や腕さし込で折にけり 太祇
山吹を折ろうすれば、花を傷めぬように、どうしても腕をそっと差し込むしかない。
蛇笏の芒の句が思い浮かぶ。
おりとりてはらりとおもきすすきかな
飯田 蛇笏
昨日、新大久保の教会前でチューリップを見つけた。
チューリップ喜びだけを持ってゐる 綾子
ふらこゝの会釈こぼるゝや高みより
な折そと折てくれけり園の梅
扨(さて)永き日の行方や老の坂
川の香のほのかに東風(こち)の渡りけり
ふりむけば灯とぼす関や夕霞
やぶ入の寐るやひとりの親の側(そば)