読書逍遥

第16回『複雑化の教育論』内田樹著

冨田鋼一郎

私は、60代の10年間大学の教壇に立ち、「教える」と「学ぶ」についてずっと自問自答してきたように思う。良い教育とは何なのか。

先生になるとは、これまで学んできたこと(インプット)を有用な知識として教え授ける(アウトプット)ことだと思っていたが、とんでもない。
「教える」と「学ぶ」との間には、実に奥深い心の相互作用がある。

こんなことに気づかせてくれたのが、『先生はえらい』だ。何度も読み返し、腑に落ちた。目からウロコとはこのことだ。
本書は全国の教育現場で悩める教師への応援讃歌になったのではないだろうか。

10年間の教師体験はささやかだったが、私にとって醍醐味を味わうことが出来、自分の殻を破ることができたと思う。その延長線上に今がある。

新著『複雑化の教育論』は、さらに敷衍した講演録。子供たちの成熟、すなわち、複雑化していくことを支援するのが教師の仕事だ。
久しぶりに意味深淵な言葉に耳を傾けた。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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