作品・本・人物紹介

松村呉春筆「蕪村早春の五句」

冨田鋼一郎

明日2月4日は立春、暦の春到来ですが、今が一番厳しい寒さ。
そして、明後日2月5日は初午です。稲荷神社は年初めの行事で賑わう。

蕪村の弟子、松村呉春(月渓)が師匠の早春五句を書いています。

初午やその家々の袖だたみ

はつむまや物種うりに日のあたる

雁ゆきて門田(かどた)も遠くおもはるる

あけぼののむらさきのまくや春の風

野ばかまの法師が旅やはるのかぜ
   夜半の作 月渓書「印」

句の高さを上下させて、暖かくなってきた春風に心も浮き立つ。

師匠の句を失礼にも「夜半の句」と呼び捨てにした。これには理由がある。

呉春は画が巧みだったため、藩主など高貴な人の屋敷に上がることが許されていた。
この書は師匠より位の高い人物へ献上したもののため、師といえども夜半とした。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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