渡辺崋山『目黒詣』(2)
冨田鋼一郎
有秋小春
明日2月4日は立春、暦の春到来ですが、今が一番厳しい寒さ。
そして、明後日2月5日は初午です。稲荷神社は年初めの行事で賑わう。
蕪村の弟子、松村呉春(月渓)が師匠の早春五句を書いています。
初午やその家々の袖だたみ
はつむまや物種うりに日のあたる
雁ゆきて門田(かどた)も遠くおもはるる
あけぼののむらさきのまくや春の風
野ばかまの法師が旅やはるのかぜ
夜半の作 月渓書「印」
句の高さを上下させて、暖かくなってきた春風に心も浮き立つ。
師匠の句を失礼にも「夜半の句」と呼び捨てにした。これには理由がある。
呉春は画が巧みだったため、藩主など高貴な人の屋敷に上がることが許されていた。
この書は師匠より位の高い人物へ献上したもののため、師といえども夜半とした。