蕪村の梅
冨田鋼一郎
有秋小春
19860426123 何の数字でしょうか。
「チェルノブイリは私たちがこれから解くべき謎、読み解かれていない記号です」
読み出したら読み終えるまで手放せなくなった。チェルノブイリの現場の様子をさまざま人のインタビューを通じて伝える。内容が重い本だが、心が温かくなる。
悲惨な現実に遭遇した人々の言葉による単なる’お涙頂戴’に終わらせず、深い思索へと引き込んでいく。
「私の20世紀最大の出来事は恐ろしい戦争や革命ではなく、チェルノブイリです。私にとってこれは「新しい大惨事の歴史の始まり」です。チェルノブイリは単なる過去の歴史ではなく「未来のための予備知識」「未来の物語」なのです」
人類はこの100年間、スターリン強制収容所、アウシュビッツ、チェルノブイリ、9.14同時多発テロ、3.11福島原発事故、コロナパンデミックなど、人と人との絆を切り裂くような目に見えない脅威に遭遇してきた。
今まで使って来た言葉では現実に追いつかない。今私たちは「新しいチェルノブイリ人」、「新しいコロナ人」という当事者になった。全く新しい意識の芽生えを感じる。
思いがけない危機に遭遇して、初めて向き合わざるをえない根源的な戸惑い。20年もかけて書き繋いだ読者を深い想いに誘う書。2015年ジャーナリストとして初めてのノーベル賞文学賞。
スヴェトラーナ・アレクサンドロヴナ・アレクシエーヴィッチ(1948年生まれ)
(ドイツ亡命中)
ベラルーシ人の父とウクライナ人の母を持つ。
ノーベル文学賞受賞理由:我々の時代における苦難と勇気の記念碑と言える多声的な叙述に対して。