冨田鋼一郎
文政年間の作。眞蹟を木片に刻したもの。50才を過ぎた晩婚の一茶が、初めて子をもった喜びが感じられる句である。
ようやく首が定まり、自分の力で這い這いができるようになった可愛い我が子である。家の中で子どもが這い這いをするたびに、庭の蝶々もそれを見てうれしそうに舞うように飛んでいる。
藁ぶき家の中には赤ん坊が這う様子だろうか。ささやかな幸せを謳歌した。
もちろん作者の視線は、庭の蝶ではなく、わが子に注がれている。
江戸後期の俳人。俗語や方言まじりの生活感情に根ざす句を多く遺した。名は信之。通称は弥太郎。別号に俳諧寺寺など。句文集に「おらが春」など。
ABOUT ME
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。
各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。
著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)