骨董品

向井去来筆「応々と」句短冊幅

冨田鋼一郎
H5.5 x W36.0 (cm)

応々といへどたヽくや雪の門(かど)  去来

あたりが静まり返った雪の日、夜更けだろうか。武家屋敷の門をしきりに叩く者がある。内の者が「わかった、わかった」と言いながら門を開けに出向くが、外ではまだしきりに叩いている。よほどの急用なのだろうか。静かな屋敷に緊張が走る。

去来句として最も人口に膾炙したもののひとつ。柴田宵曲『蕉門の人々』によれば、この句は、「大まかなようであって、しかも微妙なものを捉えている」という。

去来は、芭蕉の生前から既に重きをなしていた。『鬼貫句選』で、蕪村は「其角、嵐雪、去来、素堂、鬼貫を知らざるものには共に俳諧を語るべからず」と言った。
「・・を知らざるものには、・・・を語るべからず」、この表現は、蕪村の常套語。

去来代表句をここに挙げておく。

うごくとも見えで畑うつ麓かな
秋風やしら木の弓に弦はらん
湖の水まさりけり五月雨

向井去来(むかい きょらい1651-1704)

江戸前期の俳人。別号、落柿舎など。蕉門十哲の一。京都に住み、堂上家に仕え、致仕後、嵯峨に落柿舎を営んで芭蕉を招いた。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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