蕪村の特徴ある人物表現(その6)「呂洞賓(りょどうひん)」
冨田鋼一郎
有秋小春
⭕️もの涼し春日の巫女の眼にほれた 子規
季語:涼し(夏)
子規(1867~1902)は、郷里松山と東京を何度か往復している。
初夏、道中で春日大社に立ち寄ったことがあったのだろう。巫女さんの涼しげな目元にちょっと惚れてしまった。
子規は、恋愛体験があったのだろうか。亡くなる直前の「渡辺のお嬢さん事件」は、印象的である。
あるいは蕪村の類似句から着想を得たものか。
蕪村句は乙女でなく、隣家の女房。その目元は「もの涼し」いどころかどこか妖艶で、蕪村のいわゆる妖怪趣味にグッと近づく。
○かはほりやむかひの女房こちを見る 蕪村
季語: かはほり(夏)
○酒を煮る家の女房ちよとほれた 蕪村
季語 酒煮(夏)
[河東碧梧桐箱書き短冊幅現物]