冨田鋼一郎
[タンポポ]
[シャガ]
漱石の『草枕』は、蕪村句集のなかの春の部を散文に書き直したような作品だ。
「タンポポ」についても印象的な表現がある。
「しばらくは路が平らで、右は雑木山、左は菜の花の見つづけである。足の下に時々たんぽぽを踏みつける。鋸(のこぎり)のような葉が遠慮なく四方へのして、まん中に黄色な珠を擁護している。菜の花に気をとられて踏みつけた後で、気の毒なことをしたと、振り向いてみると、黄色な珠は依然として鋸のなかに鎮座している。呑気なものだ。」
植物にも優しい眼差しを注ぐ蕪村と漱石。
いくつも蕪村句が思い浮かぶ。
ABOUT ME

日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。
各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。
著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)