日々思うこと

桜 二句

冨田鋼一郎

今日も雨。桜が戸惑って開花を逡巡(しゅんじゅん)している。

同じ「逡巡」でも、蕪村の次の句の意味は場面が違う。

⭕️ゆく春や逡巡として遅ざくら 蕪村

ためらいがちに去り行こうとしている春。その春の歩みに合わせてためらいながら遅桜が咲いている。あたかも春の過ぎゆくのを一日でも遅らせようとするかのごとく。

惜春の情がこもった句だ。

☆☆☆☆

⭕️まさおなる空よりしだれ桜かな 
            (富安)風生

こちらは声を出して一読忘れがたい句。

「あ音」の多様して(17音のうち9音)、抑揚のあるリズムのなめらかさが春の風情にふさわしい。

枝垂れ桜の一樹を見上げる場面。品のある見事な一句。

ポトマック川沿いの長い桜並木、これはこれで見事でいいのだが、西洋料理のように大味だ。

奥村土牛の大作「醍醐」を思い出す。

スポンサーリンク

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
記事URLをコピーしました