シーズンを通して行きつけの板橋区赤塚植物園
冨田鋼一郎
有秋小春
今日も雨。桜が戸惑って開花を逡巡(しゅんじゅん)している。
同じ「逡巡」でも、蕪村の次の句の意味は場面が違う。
⭕️ゆく春や逡巡として遅ざくら 蕪村
ためらいがちに去り行こうとしている春。その春の歩みに合わせてためらいながら遅桜が咲いている。あたかも春の過ぎゆくのを一日でも遅らせようとするかのごとく。
惜春の情がこもった句だ。
☆☆☆☆
⭕️まさおなる空よりしだれ桜かな
(富安)風生
こちらは声を出して一読忘れがたい句。
「あ音」の多様して(17音のうち9音)、抑揚のあるリズムのなめらかさが春の風情にふさわしい。
枝垂れ桜の一樹を見上げる場面。品のある見事な一句。
ポトマック川沿いの長い桜並木、これはこれで見事でいいのだが、西洋料理のように大味だ。
奥村土牛の大作「醍醐」を思い出す。