2023年4月14日付け朝日新聞「いま聞く」より
冨田鋼一郎
有秋小春
大雨、酷暑お見舞い申し上げます。
蕪村には朝顔の佳句がいくつかあります。ところが絵は描いていないと言われてきました。しかし、最近、若き蕪村が描いた朝顔画が発見されました。
これは、寛保元年1741年、蕪村25歳、絵画修業を始めた頃の習作です。
⭕️朝顔の一輪深き淵の色 蕪村
藍色の朝顔。その一輪の小さな花の中に深淵の藍の色のすべてが湛えられているかのようだ。深淵の深きことはこれ眼前の朝顔、といった禅問答めかした機知的把握。(講談社蕪村全集註釈)
⭕️あさがほや手拭いのはしの藍をかこつ 蕪村
朝の洗顔の折、露に濡れた朝顔の藍色と見比べて、手拭の端の藍染めなんざァ、この朝顔の色にくらべたら問題じゃねえ、と愚痴をこぼす。その愚痴を通して朝顔の藍の深さをたたえた。(講談社蕪村全集註釈)