読書逍遥

読書逍遥第190回 『細胞』(上・下) (その9)ジッダールタ・ムカジー著

冨田鋼一郎

『細胞』(上・下) (その9)ジッダールタ・ムカジー著

副題 生命と医療の本質を探る
原題 The Song of the Cell
An Exploration of Medicine and the New Human

「自分たちが何を知らないのかすら、私たちにはわかっていない」

今の私にこれほど強烈に響く言葉を知らない。心に留めて、「細胞の歌」にもっと耳を傾けていこう

そもそも「意識」はどのような物理的メカニズムで生まれるのか?

生命の仕組みのみならず、地球物理、原子力、、、私たちはまだ何を知らないかを知らないことだらけ

さらに、気候変動をもたらす地球の複雑なメカニズムや、いまだに高濃度放射能デブリに手をつけることができないでいることを目の当たりにしている

☆☆☆

(下巻カバー見開き)
新型コロナウィルスによるパンデミックは、「細胞」についてわかったつもりになっていた人類の知識に、いかにまだ多くの欠落があるかを浮き彫りにした

「自分たちが何を知らないのかすら、私たちにはわかっていない」のだ

私たちの体はいかにして恒常性とバランスを保っているのか?

がん細胞が増殖を欲しいままにする臓器と、決して寄せ付けない器官との違いはどこにあるのか?

結局のところ、私たちの細胞は、自己とそれ以外とをどのようにして識別しているのか?

現在の医学を持ってしても完全には解明しきれていないこれらの疑問に答えるためには、細胞同士の会話や細胞が発するメッセージ、いわば「細胞の歌」にもっと耳を傾ける必要がある

細胞工学や人工臓器、ゲノム編集などの技術で「ニューヒューマン」を誕生させることが可能になってきた今だからこそ改めて読むべき、細胞を巡る発見と探求の年代期

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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