東ドイツ記念通貨5マルク白銅 未使用メンツェル没後75年記念
冨田鋼一郎
有秋小春
竹内栖鳳『日稼』の木版画。大正6年作。
早朝から炎天下でぶっ通しの野良仕事、昼下がりの土間の薄暗い日影の場面であることが、日なたの強い日射しを想像させる。草鞋を履いたまま、蓑笠を竈脇に置き、水がめから茶碗に注いで、一息ついた農婦の一瞬を捕え得た。庭から鶏までついてきた。ほっと前掛けで汗をぬぐう姿勢からいかに腰を屈める農作業が単調でつらいものであるか。大勢の女性の健康な汗、ほんの一昔前までは、この汗が一家の暮らしを支えてきたのだ。
田中日佐夫著『竹内栖鳳』(岩波書店 昭和56年)口絵にこの木版『日稼』を掲載した上で、つぎのように紹介している。
画題は、炎暑に本願寺のお茶所で喉を潤す一稼婦を示す。疲れた表情は、顔などからも察しられ、夏の午後のけだるさがただよっているかのようである。発表当時の評は、あまりかんばしくなかった。原作は見失われている。このような精巧な木版が残っていることは不幸中の幸いというべきである。
渡辺京二著『逝きし日の面影』や江戸・明治日本を訪れた欧米人の「日本人は貧しいのに陽気で幸せそうだ」という感想を紹介している。幸せとはなにか。今の日本人が、ほとんど忘れかけた昔の日本人の幸せのかたちです。
近代日本画の先駆者。