骨董品

竹内栖鳳作『日稼』木版画

冨田鋼一郎

竹内栖鳳『日稼』の木版画。大正6年作。

早朝から炎天下でぶっ通しの野良仕事、昼下がりの土間の薄暗い日影の場面であることが、日なたの強い日射しを想像させる。草鞋を履いたまま、蓑笠を竈脇に置き、水がめから茶碗に注いで、一息ついた農婦の一瞬を捕え得た。庭から鶏までついてきた。ほっと前掛けで汗をぬぐう姿勢からいかに腰を屈める農作業が単調でつらいものであるか。大勢の女性の健康な汗、ほんの一昔前までは、この汗が一家の暮らしを支えてきたのだ。 

田中日佐夫著『竹内栖鳳』(岩波書店 昭和56年)口絵にこの木版『日稼』を掲載した上で、つぎのように紹介している。

画題は、炎暑に本願寺のお茶所で喉を潤す一稼婦を示す。疲れた表情は、顔などからも察しられ、夏の午後のけだるさがただよっているかのようである。発表当時の評は、あまりかんばしくなかった。原作は見失われている。このような精巧な木版が残っていることは不幸中の幸いというべきである。

渡辺京二著『逝きし日の面影』や江戸・明治日本を訪れた欧米人の「日本人は貧しいのに陽気で幸せそうだ」という感想を紹介している。幸せとはなにか。今の日本人が、ほとんど忘れかけた昔の日本人の幸せのかたちです。

竹内栖鳳(たけうち せいほう1864-1942)

近代日本画の先駆者。

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冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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