「変わる刑務所」 朝日新聞グローブ 262号2022.9.4
冨田鋼一郎
有秋小春
これは1507年ドイツの世界地図。アメリカと名付けられた西大西洋の大陸、また、インド洋が南回りで行けることも示している。このふたつは当時の最新の大発見情報だ。
コロンブス、バスコダ・ガマの快挙から20年も経ていないのに広く知られるようになった当時の知識人の世界観を示す貴重なもの。
世界の果ては未知なために、想像の神、動植物、模様で埋め尽くされている。空白を残すことは知らないことと同義で、きっと不安を覚えたのだ。
自分は知らなくとも、この世を作りたもうた全能の神は全てをご存知なはずだ。神の知る世界を想像して描き尽くした。
自分の「無知」を受け入れるようになることと、空白のある世界地図が登場すること、そして、近代科学の発展は、その後しばらくしてからだ。