読書逍遥

第74回『孤独の研究』木原武一

冨田鋼一郎

木原武一『孤独の研究』1995刊

人はひとり。
人はふたり。

このような矛盾のなかにあるのが人間。
自然の一部としての人間は、誰もかけがえのない唯一の存在、同時に全ての人間は、他人との関係のなかで生きる。

学校で集団で生きる技術ばかりを教え込まれ、家庭や社会では、「人はふたり」という面ばかりが求められる。

他人の立場に立ってものを考える人は、自分の考えを持つことが出来ず、ひいては考えそのものを持てなくなる。

大切なのは、他人といかに付き合うかではなく、自分自身といかに付き合うかだ。これは誰も教えてくれない。

’自分といかに付き合うか’とは、孤独という避け難い事実に如何に対処するかということ。

「孤独はあらゆる創造の源泉」と著者は言う。本書で採り上げた人物は、ニーチェ、ショーペンハウアー、グレン・グールド、ピューリツァー、ハワード・ヒューズ、モンテーニュ、ソロー、プルースト。

「自分が他人にとって、無用な、荷厄介な、迷惑となるこの没落の年齢には、自分が自分にとって、迷惑な、荷厄介な、無用なものとならないように注意しなければならぬ。自分を喜ばせ、自分を可愛がりなさい。とくに自分を抑えなさい。自分の理性と良心を敬い、畏れなさい」(モンテーニュ)
重い言葉を見つけた。

これからはますます一人で生きることが求められる時代になった。

「夢みて咲いている」ヤグルマギク・スイートピーと紫陽花

スポンサーリンク

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
記事URLをコピーしました