蕪村の梅の句は『蕪村全集』によれば80余ある。
梅の木もいくつか描いて残してくれた。
今回はその中から若書きの絹本淡彩の部分。
渓流が画面を大きく湾曲しながら流れ下る。丁寧に描き込んだ渓流沿いにある竹林と二もとの梅。淡紅色に染まった花が的皪と光る。東屋には清香が漂ってくる。
梅の根元に注目。地面から浮き出た根っ子が鷲の爪のように土地を鷲掴みしている。
「命が凝縮」している根の強い生命力!このような描き方は蕪村の独壇場で、後に人物の足指にも見られるようになる。
野路(のぢ)の梅白くも赤くもあらぬ哉
こちの梅も隣のうめも咲きにけり
二もとのむめに遅速(ちそく)を愛すかな
水にちりて花なくなりぬ岸の梅
白梅や誰(た)がむかしより垣の外
ABOUT ME
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。
各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。
著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)