赤堀新平「渡辺崋山胸像」ブロンズメダル
冨田鋼一郎
有秋小春
「悠然として南山を見る」(陶淵明)
「うれしい事に東洋の詩歌はそこを解脱したのがある。
採菊東籬下
悠然見南山
ただそれぎりの裏(うち)に暑苦しい世の中をまるで忘れた光景が出てくる。漱石「草枕」
悠然と山を望む馬上の人、健康的な若い馬子。動かぬ肥えた馬。低い藁葺き屋根の庇の下の物干し。群がり咲く赤や黄の草花。丁寧に描き分けられた正面の大きな2本の樹木や道端の草々。右上の薄く描かれた山容の量感も良く出ている。
蕪村が30代半ばまで関東(江戸と結城下館)にいた頃の作品。
つくばの山本に春を待
行年や芥(あくた)流るるさくら川
宰町(蕪村)
(「夜半亭歳旦帖」(寛保元年)に所収)
人物は、伝統的な中国の山水画では自然に抱かれるように小さく描かれる(寸馬豆人という)。
しかし、ここでは主役は、手前の馬上の人物と馬子。どっしりと安定した馬と騎乗者の実在感。江戸中期にこのような絵画は蕪村をおいていない。
落款:「さくら川村 四明筆」
印: 「長滄」
遊印:「發墨生痕」
落款からの時代特定
関東遊歴時代
筑波山付近
さくら川村とは
印泥の色が違う 遊印は後の印
おそらく上洛後に押したものと考えられる
絵画鑑賞
雄大
馬上人物と馬子 点景ではない 眼前の人物が大きい
江戸時代にはない近代的、写実的な風景画 実際に見たことを強く印象づける
心象風景でない
いったい誰にヒントを?
藁葺きの家屋 低い軒と庇
草花
「夜半亭歳旦帖」寛保元年
つくばの山本に春を待
行年や芥流るるさくら川 宰町
漱石「草枕」
うれしい事に東洋の詩歌はそこを解脱したのがある。
採菊東籬下
悠然見南山
ただそれぎりの裏(うち)に暑苦しい世の中をまるで忘れた光景が出てくる。