初夏の早朝、少し湿り気のある空気の中を禅寺の和尚さんに会うために出かける。裏庭の池に蓮を切りに出かけたのだろうか、縁側で庭を眺めながら帰りを待つ。明治40年作。
この年は『虞美人草』執筆中で、参禅をテーマとした『門』より三年早い時期にあたる。
清浄な境内の風情を漱石は愛した。手帳に書き留められた「清水」「鹿」「秋の空」と並んで「蓮」十三句 の中の一句。
蕪村らの句と並べて漱石の蓮句を並べてみよう。どれも風情があり、佳句だ。
ほのぼのと舟押し出すや蓮の中 漱石
蓮(はちす)見て僧ほのぼのと立れけり 召波
白蓮(びゃくれん)を切らんとぞおもふ僧のさま 蕪村
ABOUT ME
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。
各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。
著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)