油絵

(伝)浅井忠 油彩『夕暮れ時の街道宿場』

冨田鋼一郎
H21.0 x W27.0 (cm)

サインなし

素晴らしい日和、暮なずむ夕暮れ時の街道沿いの宿場街。踏み固められた乾いた道を、西に向かって先を急ぐ旅人。旅情あふれる光景だ。
太い松の幹が画面を斜めに貫いて絵のアクセントになった。
樹々の間から漏れてくる西の空は黄金に染まり、藁葺き屋根、点景の人物、店の幟・暖簾など古色蒼然としている。
落ち着いた色彩で、丁寧に描きこんだ。足早に太陽は地平に沈み込み、みるみるうちに黄金色は色褪せて紫色に変じてゆく。

移動する主な手段は歩行(かち)だった明治初期頃まで、どこにでも見られた旅の光景だ。
近代洋画の幕開け時期、日本の懐かしい場面を描き留めておいてくれた。

浅井忠には八王子辺りの風景画がある。この作品も武蔵野台地、江戸の西郊の五日市街道かもしれない。

奥行きのある道を主題にした画を「道路山水」という。
特別な名所ではない、ありふれた道風景を絵画化していくことで、それまでにない新しい風景画の視点を切り開いた。

サインはないが、浅井忠作と伝わる。画題からして、若書きの画だろう。

浅井 忠(あさいちゅう1856-1907)

明治期の洋画家、教育者。号は黙語(もくご)。『吾輩は猫である』の挿画を他の2人とともに描いている。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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