加藤暁台筆「鹿追ひや」短冊
冨田鋼一郎
有秋小春
別路や処を得たる夏木立 葛三
季語:夏木立(夏)
村はずれの辻であろう。ここでいくつかの隣町への分かれ道となる。
木立が暑い日差しを浴びて、広い木陰をつくって群れ立っている。
旅人たちが足の疲れを癒す格好の場所であろう。きっと茶店などがあったに違いない。
夏木立が「処を得て」立っていると表現することによって、分かれ道にある木立が人びとに親しまれ、心地よい場所であることが容易に想像できる。
思わず深呼吸したいような落ち着いた、穏やかな句である。
人びとは、思い思いの方向を選択して、人生の歩みを進めていく・・・。
広重の東海道五十三次の浮世絵の画題になりそうだ。
白雄、長翆と続く名門春秋庵の三世、葛三にふさわしい佳句。
江戸時代中期-後期の俳人。郷里の信濃で宮本虎杖(こじょう)にまなぶ。江戸にでて加舎白雄の門にはいり、常世田長翠の春秋庵をつぐ。晩年は相模大磯の鴫立庵にすんだ。