橋本泰里賛句「鶯の」谷口月窓画幅
冨田鋼一郎
有秋小春
鳥追やそも三日月の笠のうち
南湖 印
季語:鳥追(とりおひ)(新年)
鳥追いは、正月、家々を祝って歩く門付け芸能の一種をいう。
編笠をかぶった女太夫が三味線を弾き、鳥追歌を歌って、町家の店頭に立って祝儀の銭を請い歩いた。
起源は、農家の小正月の行事「鳥追い」から。地方によって異なるが、正月十四日または十五日の暁に子供が中心になって田畑の害虫を追い払うために鳥追い歌を歌うことは共通している。これを職業化したものが、正月の門付け芸の鳥追いである。
三味線を弾く若い女芸人の粋な後姿を描く。左利きである。
かぶった編み笠も大きく傾いて、ちょうど三日月に見える。一瞬を切り取った一コマである。
右肩をいからせているので、快活なメロディーに合わせて練り歩く躍動感が伝わってくる。いったいどんなメロディーだったのか。
鳥追いは、今では見られない新年の行事、また、こんな職業もあったのかと驚かされる。
江戸中期から後期に活躍した文人画家。