松村景文筆「大原女」
冨田鋼一郎
有秋小春
紙本墨画淡彩
款記 「四明」
印 「四明山人」(朱文方印)
「淀水」(白文方印)
絵部分は、落款から20代後半から30代前半に過ごした結城下館時代のものと判明する。
先(まず)うごく枝の目につく柳哉 九湖
柳の枝に飛びつこうとしている一匹のカエルの後ろ姿を大写しした。
僅かに覗く目、身体のイボイボ、無造作につけたような足指など細部にまで小さな生命(いのち)の躍動を感じ、網膜に焼き付いて離れない。
今日まで270年という長い時間が流れた。
「人生は短く、芸術は長し」。
これが芸術の(筆の)力というものだろうか。
九湖は、安永期の蕪村門下の俳人。
実はこの「蛙図」は、「安永三年春帖」(1774)に掲載された16枚の版画挿絵の原画。
挿絵では原画ては彩色されている柳が省かれている。
どうして25年も前に描いた蛙画を安永三年春帖で持ち出したのか。