骨董品

澁澤栄一筆絹本「秋思」マクリ

冨田鋼一郎
H33.5 x W48.5 (cm)

 琪樹西風枕簟秋 楚雲湘水憶同遊 高歌一曲掩明鏡 昨日少年今白頭
   右許渾秋思作
    青淵 印 印

琪樹(きじゅ)の西風枕簟(ちんてん)の秋楚雲湘水同遊を憶(おも)ふ高歌一曲明鏡を掩(おほ)ふ昨日の少年今白頭

秋思:秋の寂しいもの思い。季節の秋と人生の秋との双方の意を兼ねる。
琪樹:玉のように美しい木。雪をかぶった木のさま。
西風:秋風。
枕簟:まくらとたかむしろ。夏物の寝具。
楚雲:楚の国の雲。 
湘水:湘江。湘江の流れ。
憶:思い起こす。 
同遊:ともに遊んだ人たち。

高歌:高らかに声に出して歌う。 
掩:おおう。おおいかくす。*鏡に映った自分の老けた姿を見ての行動になる。 

昨日:きのう。過去。 
少年:若者。 
白頭:白髪頭の老人。

玉のように美しい木に秋風が訪れ、夏物のまくらとたかむしろなどの寝具も肌寒くなって、秋が訪れたのが分かるようになった。
楚の国の雲に湘江の流れに、昔の仲間を思い起こす。
高らかに一曲歌おうとしたが、鏡に蓋をしてしまった(鏡に映った自分の年老いた姿を見たため)。 
あの頃の若者は、今は白髪頭の老人となってしまった。 

許渾(きょこん791−854?)

晩唐の詩人。字は仲晦。

澁澤栄一(しぶさわえいち1840-1931)

実業家。号、青淵。

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冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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