松村呉春(月渓)「蕪村雛ニ句画賛」絹本断簡
冨田鋼一郎
有秋小春
琪樹西風枕簟秋 楚雲湘水憶同遊 高歌一曲掩明鏡 昨日少年今白頭
右許渾秋思作
青淵 印 印
琪樹(きじゅ)の西風枕簟(ちんてん)の秋楚雲湘水同遊を憶(おも)ふ高歌一曲明鏡を掩(おほ)ふ昨日の少年今白頭
秋思:秋の寂しいもの思い。季節の秋と人生の秋との双方の意を兼ねる。
琪樹:玉のように美しい木。雪をかぶった木のさま。
西風:秋風。
枕簟:まくらとたかむしろ。夏物の寝具。
楚雲:楚の国の雲。
湘水:湘江。湘江の流れ。
憶:思い起こす。
同遊:ともに遊んだ人たち。
高歌:高らかに声に出して歌う。
掩:おおう。おおいかくす。*鏡に映った自分の老けた姿を見ての行動になる。
昨日:きのう。過去。
少年:若者。
白頭:白髪頭の老人。
玉のように美しい木に秋風が訪れ、夏物のまくらとたかむしろなどの寝具も肌寒くなって、秋が訪れたのが分かるようになった。
楚の国の雲に湘江の流れに、昔の仲間を思い起こす。
高らかに一曲歌おうとしたが、鏡に蓋をしてしまった(鏡に映った自分の年老いた姿を見たため)。
あの頃の若者は、今は白髪頭の老人となってしまった。
晩唐の詩人。字は仲晦。
実業家。号、青淵。