骨董品

正岡子規筆「もの涼し」句短冊幅

冨田鋼一郎
H35.5 x W6.0 (cm)

もの涼し春日の巫女の眼にほれた 子規

河東碧梧桐箱書き「子規短冊」

季語:夏(涼し)

子規は、郷里松山と東京を何度か往復している。道中で奈良春日神宮に立ち寄ったことがあったのだろう。偶然に出会った巫女さんの涼しそうな目元に惚れてしまった子規。

子規は、具体的な恋愛体験を持ったことがあったのだろうか。遺した文章からは窺うことができない。そんな中で、この句のような、ふとした折に淡い恋情が芽生えたことは幾度かあったのだろう。もっとも亡くなる直前の「渡辺のお嬢さん事件」は、実に印象的である。

類似句として、蕪村の句を紹介する。

かはほりやむかひの女房こちを見る 蕪村

夏の夕暮れ、こうもりの飛ぶ姿を追って、向かいの家の女房を視線の合った一瞬。庶民生活の中のふとした艶情。

正岡子規(まさおかしき1867-1902)

俳人・歌人。名は常則。別号は獺祭書屋主人、竹の里人。

河東碧梧桐 (かわひがしへきごとう1873-1937)

俳人。松山市生まれ。句詩「海紅」「碧」「三昧」を創刊。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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