骨董品

渡辺崋山筆画稿「山水画」その1

冨田鋼一郎

画稿裏に付き人・高木梧庵による書き留めがある。

崋山渡辺先生筆
  干時文政十亥年七月 後学高木梧庵 印

典型的な山水である。手前の深山幽谷のなかの孤亭や遠方の山肌の皺などの描き方は、たしかな技量が感じられる。

文政10年(1827)丁亥7月の作である。この年の同月は、崋山にとってやっかいな出来事が起こった月だった。遺されたこれらの画稿は、この出来事の直前だったのだろう。すなわち、三河藩主康明が逝去したために、世継ぎ問題が起こった。この問題は、崋山を長く苦しめた。

崋山は、膨大な下絵・画稿やスケッチ群を遺した。手控え帖としても遺されている。また、手控え帖はばらばらに崩されて、散逸したものも多い。これらは崋山の落款が押されていないため、作者不詳として打ち捨てられたものも多い。

渡辺崋山(わたなべ かざん1793-1841)

高木梧庵(たかぎ ごあん)

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冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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