マクリ

与謝蕪村筆「四季行事風俗図(春夏)」第2扇

冨田鋼一郎
H61.0 x W39.0 (cm)

「初午祭図」
 浪華長堤四明山人画 朱文方印「〇〇山人」 朱文方印「淀水」

初午は、稲荷神社で五穀豊穣を祈る神事。子どもらにとっては年の初めの楽しみの行事である。やっと春らしく柔らかくなった日差しの中、芥子坊主の子がお囃子太鼓をたたき、おかっぱの娘が笛を吹き、もう一人の女児が両手に何か持って踊っている。後ろ姿で座っている小児が手にしているのは絵馬だろう。狐の仮面をかぶって踊っている子もいる。日常を離れ、心を開放する大事な時間である。遠方の村はずれには、大きな薄紅の鳥居と一叢の杉林が見える。あちこちの藍と朱の淡彩が目に心地よい。

初午やその家々の袖だゝみ 蕪村
初午やものだね売りに日のあたる 蕪村

初午の日には、どこの家でも身なりを整えて出かける。それぞれの家なりの勝手な流儀の袖畳みの跡がついていて、いかにも庶民の祭りらしい。稲荷神社は参詣の人々で大賑わい。その喧噪をよそに、作物の種などを売る露店には春のうららかな日が差している。ざわめきやら呼び声やら、余白あるため想像力を引き立てる。

「四季行事風俗図(春夏)」六点の詳細は、著書『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2018年)を参照ください。

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なお、「四季行事風俗図(春夏)」六点は、2020年9月8日の「開運!なんでも鑑定団」で放映されました。

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与謝蕪村(よさ ぶそん1716-1783)

18世紀日本を代表する画・俳の巨匠。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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