骨董品

渡辺崋山筆芭蕉「芭蕉葉を」句画賛扇面

冨田鋼一郎
H15.0 x W45.0 (cm)

芭蕉葉をかしらに懸む庵の月
           のぼる

季語:月(秋)

元禄5年8月、芭蕉庵に移植したときの喜びの句。「芭蕉を移す詞」参照。

ようやくまた再びこの芭蕉を庵に移植できた。そろそろ仲秋の名月がやってくる。その折には一枚葉を折って、そこに表八句を書いて庵の柱に掛けよう。

崋山は旅中の宿で秋の月を愛でながら、芭蕉句を思いついたのだろう。中秋の名月でなくてもよい。であれば天保二年(1831)秋の毛野国への旅先での染筆かもしれない。右上に満月が描かれている。

「のぼる」について一言。崋山は俳句には「のぼる」の号を用いた。その例は多く存在する。参考までに森銑三の文章をここに引用する。

この登をノボリと読むべきことを、先年来田原の人々が主張している。藩の記録に明らかにノボリと見えているというのである。但し有名な目黒詣の絵巻以下、崋山自身ノボルと書いているものが多数に発見せられている今日、特にノボリというには及ばない。況や崋山自身ノボリとしている実例の一つも見当たらぬに於いてをや」

引用:森銑三『渡辺崋山』
渡辺崋山(わたなべ かざん1793-1841)
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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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