骨董品

小林勇筆「バラ」図

冨田鋼一郎

頭上漫々脚下漫々
  丁巳冬青勇 印「冬青」
      左手

1977年作。たわわに咲いたバラを愛用の花瓶に挿して描く。バラの生命力と漂ってくるようだ。作者の温かな人柄が伝わってくる。「私は自分がよくならなければいい絵は出来ないと信じている。」常々彼が言っていた言葉どおり、日々よくなりたいと念じながら、精進を重ねたものがこのような形で遺された。

冬青小林勇は晩年リウマチを患い、右手で絵筆を執ることができないため、左手で描いた。原稿であれ、画紙であれ、筆を生涯絶つことがなかった。

小林勇(こばやし いさむ1903-1981)

岩波書店元会長・随筆家。号は冬青。幸田露伴、齋藤茂吉、寺田寅彦など名だたる知識人と広く交流し、親しく交際して培われた人物評伝は余人をもって換えがたい美しい作品となっている。画を描くことを生涯の趣味とした。名エッセイストとして、『遠いあし音』『小閑』など随筆も多数。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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