東ドイツ記念通貨5マルク白銅 未使用ベルリン支庁舎
冨田鋼一郎
有秋小春
うち水の雲きりに立つ牡丹かな 巣兆 印「松甫」
打ち水で咲き誇った牡丹からいっせいに精気が立ち上ったようだ。略画ながら生き生きした牡丹が眼前に迫る。力強い句だ。
この句から直ちに連想するのは、蕪村の一連の牡丹の佳句。
みじか夜の夜の間に咲けるぼたん哉
閻王の口や牡丹を吐かんとす
虹を吐いてひらかんとする 牡丹哉
方百里雨雲よせぬぼたん哉
地車のとゞろとひゞくぼたんかな
ちりて後おもかげにたつぼたん哉
俳諧師・画師。本名、建部英親。号、黄雀、秋香庵・茶翁。白雄門。酒を好み、客を愛し、書画に秀でた。書は、豪壮雄勁な筆勢、画は鳥羽僧正や蕪村を慕い、市井の風俗人物を描いて飄逸洒脱、俳画の妙を発揮する。なお、俳画には、父の号「松甫」の印を多く用いた。亀田鵬齋や抱一との交流も多く、俳家では、成美・道彦・士朗・長齋・大江丸・平角・乙二らと親交。