12月27日読売新聞掲載
我が家から和洋学園へ売却した掛軸の件。
「金色夜叉」の直筆原稿、愛弟子の遺品から見つかる…激しい推敲跡に専門家「紅葉の入念な執筆うかがえる」
2023/12/27 読売新聞
明治期の読売新聞に連載され、 絢爛
けんらんたる文体で当時の世相と男女の愛憎を描いた尾崎紅葉の代表作「 金色夜叉」の直筆原稿の一部が確認された。複数の 推敲
した跡があり、研究者は「紅葉の創作過程に立ち会うことのできる貴重な資料だ」と話している。
(写真 読売新聞で明治期に掲載された尾崎紅葉の連載小説「金色夜叉」の直筆原稿)
直筆原稿は2021年、和洋女子大(本部・千葉県市川市)の研究者らが紅葉などの文人の業績を顕彰する「 硯友社文庫」の設置に際し、関連資料を調査していたところ、紅葉の孫弟子の遺品の中から軸の形で見つかった。
原稿は計2枚で、1901年1月1日の読売新聞に本編の続編として、「続々金色夜叉」の題で掲載された回の一部に対応するものとみられる。主人公の貫一の夢の中で、ヒロインの宮と赤樫満枝が争い、宮が満枝を刺し殺して自害するという緊迫した場面を描いている。流麗な筆致でつづられ、一部は墨で塗りつぶすなど激しく書き直した跡がうかがえる。
明治期の文学に詳しい早稲田大学の宗像和重教授は、「使用している原稿用紙や筆跡などから紅葉の自筆とみられる。貼り紙をして直している箇所もあり、紅葉の入念な執筆姿勢がうかがえる」と語る。
「金色夜叉」の原稿は散逸しており、大学や個人が断片的に所蔵している。和洋女子大によると、今回見つかった2枚は戦前の展覧会などで展示された形跡があったという。調査に当たった同大の木谷喜美枝名誉教授は「紅葉の文学や文章に対する姿勢を広く知ってもらうとともに、草稿研究にも役立てたい」と話す。
原稿は系列の和洋九段女子中学校高等学校(東京都千代田区)内に設置された硯友社文庫に収蔵された。来年1月13日から、原則土曜日に一般公開される。
◆尾崎紅葉= 1868~1903年 山田美妙らと1885年(明治18年)に文学結社の硯友社を設立し、明治期の文学をリードした。代表作「金色夜叉」は97年から5年間、断続的に読売新聞に連載され、紅葉の死によって未完に終わった。