骨董品

若き日の蕪村「春景山水図」小品 絹本墨画着色

冨田鋼一郎
H20.0 x W13.0 cm

印:「号四明」(白文方印)
絹本墨画着色

色彩豊かな春景。遠景の丘はなだらかで、中景に竹林と小さな滝、近景には二もとの満開の梅と東屋。
竹林が左肩下がりに傾斜して、滝から渓流へとS字型に蛇行している。見え隠れする渓流が画面に奥行をもたらした。

岩や山肌、草木には生き生きした点苔(てんたい)が施されて、小さな画面だが、ひとつひとつが圧倒的な存在感を主張している。

頂き近くのこんな高い場所に平地がみえる。何だろう。

手前の岸辺の梅の木の根元に注目。地面から露出した白い根はしっかりと地面に食い込んでいて、足元にも「命が凝縮」している。

以下蕪村梅の4句。

 こちの梅も隣のうめも咲きにけり
 梅遠近(おちこち)南(みんなみ)すべく北すべく
 二もとのむめに遅速(ちそく)を愛すかな
 野辺の梅白くも赤くもあらぬ哉

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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