骨董品

春木南湖筆「鳥追い」自画賛まくり

冨田鋼一郎
H107.7 x W29.5 (cm)

鳥追やそも三日月の笠のうち
   南湖 印

季語:鳥追(とりおひ)(新年)

鳥追いは、正月、家々を祝って歩く門付け芸能の一種をいう。
編笠をかぶった女太夫が三味線を弾き、鳥追歌を歌って、町家の店頭に立って祝儀の銭を請い歩いた。
起源は、農家の小正月の行事「鳥追い」から。地方によって異なるが、正月十四日または十五日の暁に子供が中心になって田畑の害虫を追い払うために鳥追い歌を歌うことは共通している。これを職業化したものが、正月の門付け芸の鳥追いである。

三味線を弾く若い女芸人の粋な後姿を描く。左利きである。
かぶった編み笠も大きく傾いて、ちょうど三日月に見える。一瞬を切り取った一コマである。
右肩をいからせているので、快活なメロディーに合わせて練り歩く躍動感が伝わってくる。いったいどんなメロディーだったのか。
鳥追いは、今では見られない新年の行事、また、こんな職業もあったのかと驚かされる。

春木南湖(はるきなんこ1759-1839)

江戸中期から後期に活躍した文人画家。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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