骨董品

林羅山筆「月を待つ」句短冊幅

冨田鋼一郎
H36.2 x W6.0 (cm)

月を待つこヽろうつりや風かほる   羅山

季語:風薫る(夏)

新緑の風さわやかな季節である。初夏ではあるが、そろそろ秋の名月が待たれる。作者は、何か他のことで気を取られていることがあるのだろうか。「こころ移りや・・」の言葉遣いは、蕉門俳諧以前の談林・貞門時代の17世紀前半の人の作とは思えないほど、近代的である。

林羅山は藤原惺窩と並ぶ朱子学の泰斗。木下順庵・新井白石と続く。女性的な細い字からは繊細な感覚の持主であることを窺わせる。林羅山の俳句は初見でめずらしい。

18世紀になると、「こころ」を句に入れることが増えて来る。たとえば、
こヽろほどうごくものなし春の暮     暁台
菫つめばちひさき春のこヽろかな 暁台
指さすハこヽろの雲やけふの月 麦林

林羅山(はやしらざん1583-1657)

江戸時代初期の朱子学派儒学者。林家の祖。羅山は号で、諱は信勝。字は子信。

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冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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