骨董品

紀梅亭筆「移石図」幅

冨田鋼一郎
H117.0 x W27.5 (cm)

米元章移石図 
  湖南九老写 印「梅亭」

髭をつけた士大夫らしき人物の脇に書物らしきものを背負った付き人。
そのそばで大きな石を抱える庭師らしき屈強な人物3人。石を運ばせて自分好みの庭作りに励んでいるのだろうか。
動きが感じられるほど生き生きしていて、その軽妙洒脱な筆意は、師匠の蕪村ゆずりである。
本図の来歴は、中国の米元章の詩からであるが、エピソード詳細は不詳。
米元章が湖北の人であったから、落款はあえて梅亭とせず、対比する意味で、琵琶湖の南、大津に住むことからつけた号、湖南九老を使ったもの。

米芾(べいふつ1051-1107)

中国の北宋末の文学者・書家・画家・収蔵家・鑑賞家。字は元章、官職によって南宮、住拠によって海岳。子の米友仁に対して大米と呼ぶ。

紀梅亭(きのばいてい1734-1810)

梅亭は紀氏。晩年の別号は湖南九老。京の人。はじめ岩城藍田の学僕であったが、蕪村門に転じ、月渓とともに少ない内弟子の一人となった。画をよくし、大津蕪村と呼ばれた。自分の代句を蕪村に頼んだりしている。
相弟子月渓が途中から師風を棄てて写生の四条派を創めたが、梅亭はあくまで気骨ある師風を守りぬいた。だから俳画も蕪村そっくりのものを多く残している。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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