骨董品

渡辺崋山筆鸕鷀(ろじ)捉魚図

冨田鋼一郎
H135.0 x W39.0 (cm) 紙本

法沈衡斎之意 乙未六月下浣 崋山登 
朱文方印「渡邉登印」 白文長方印「鷗保」

沈衡斎は、清朝画人の沈南蘋(しんなんぴん)のこと。鮎を捕らえて今にも飲み込もうとしている鵜を柳の枝から翡翠が見下ろしている。下部の動と上部の静のコントラストが見事である。

諸画集には、まったく同様の絹本「翡翠鵜捉魚図」(サイズ110.0×42.0)が紹介されている。本図は紙本であり、サイズが一回り大きい。構図、落款(款記・印章)とも同一であり、どちらも晩年の研ぎ澄まされた崋山の技量をうかがわせる。

画中の落款によれば、制作は天保6年6月となるが、田原蟄居中、公儀を憚って年紀を5年遡及させた作品のひとつであるとされている。田原蟄居中の日記「守困日歴」天保十一年(1840)七月一日の条に、「画青緑山水、翡翠鵜捉魚二幀、鈴木春山持去」とある。

本図の紙本が出現したことで、検討する余地がでてきた。崋山は同じ絵を2点(絹と紙で)作成したのではなかろうか。鈴木春山が持ち去ったのは、絹本の方である。この紙本は手許に残した。

鈴木春山(すずきしゅんざん1801-1846)

田原藩医。崋山とは無二の親友。

渡辺崋山(わたなべかざん1793-1841)
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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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