骨董品

中沢弘光・石倉翆葉・冨田翆邦句・画寄せ書き幅

冨田鋼一郎
H114.0 x W33.3 (cm) 絹本

那智山巡禮途上
蜜柑黄に瀧遠く見る日和かな 弘光

(ぶどう一房の画に)
弘光画伯の賛余りに横暴 依りて我の腹いせがため この一菓を添ふ 花笠庵

負けぬ木の葡萄宗匠(少々)いぢけけり 弘

(翆邦の描くバナナと竹籠に)
翆葉もりんごと柘榴を描く 印「翆葉」

西国三十三所第一番札所の那智山へ出かけた折、宿で寄せ書きを行ったもの。弘光があまりに大きな字で絹本面を占拠してしまったので、翆葉はご立腹。葡萄の一房を片隅に描き、抗議の賛を付した。これに対し、弘光は、宗匠(翆葉のこと)を「少々」いじけてしまったと、駄洒落で応じた。場は笑いで収まったのだろう。

那智山:那智山青岸渡寺は、一千日の滝篭りをされた花山法皇が、永延2年に御幸され、西国三十三ヶ所第一番札所として定めた。多くの信者や参詣者が訪れる。

『西国三十三所巡礼画巻』(金尾文淵堂 大正14年刊)は、中沢弘光木版画・石倉翆葉解説で出版された。

中沢弘光(なかざわひろみつ1874-1964)

洋画家、版画家、油彩画家、挿絵画家。日本芸術院元会員。

石倉翆葉(いしくらすいよう1875-1938)

大正から昭和にかけての俳人。尾崎紅葉門。号、花笠庵。

冨田翆邦(とみたすいほう1892-1956)
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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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