ハクモクレン
冨田鋼一郎
有秋小春
注文してドリップが出てくるのを待っていると、「モバイルオーダーの方お待たせしました」とレジから呼ぶ。スーツできめた青年が受け取っていった。
見ていた僕がレジの若い女性に「カッコいいね」というと、「ええ、すらっとしていて」と返事がきた。見ている所が違う。
そっちじゃなくて、モバイルオーダーしているのがカッコいいと言ったつもりだが、勘違いされてしまった。人によって見ている所がこんなにも違う。
私はモバイルオーダーやウーバーイーツなどしたことがないし、思いもつかない。
コマーシャルの「じゃ、お前ならどうする」の声が聞こえてくる。今日も自分が時代遅れになってることに気づいた。
ラジオ、懐中電灯、手帳、百科事典、辞書、新聞、地図帳、年表、時計、タイマー、財布、コイン、定期券、電話機、メール、虫眼鏡、万歩計などなど身の回りから小道具が消えていった。
CD、ファックスに始まって、ワープロ文字入力、検索エンジン、動画、wikipedia、Facebook、Instagram、Twitter、カーナビ、ズーム、Kindle出版、、、これから自動運転、空飛ぶ車、生成A I、、、ドギマギさせられながら、どこまでも慣らされていくのだろう。
カルミアと紫陽花になぐさめられる。