今日の折々のことば
冨田鋼一郎
有秋小春
大谷翔平さんの言葉、「今日だけは憧れるのをやめましょう」が話題になった。勝ち負けの世界にドップリ浸かっている人にはとても受ける言葉かもしれない。
しかし、この言葉のポイントは、「今日だけは」と限定付きてあること。勝負を離れれば、「あこがれる」ことは決して悪いことではない。むしろ、大いに奨励すべきことだ。
人の成長は「あこがれ」からはじまると言っていいからだ。大谷さんも、あこがれてプロ野球選手になり、あこがれてメジャーリーグに入ったのだ。勝負の世界に入って、自分もきっと誰かに「憧れてばかりではダメだ。勝つことはできないよ」と言われたのではないか。
しかし、教育の根底にあるものは、あこがれの伝染である。あこがれにあこがれる関係づくり。
新しい世界にあこがれ、燃えて学んでいる人は、魅力を放っている。その人の「あこがれ力」に触発された人は、自分も何か学びたくなる。教師と学生との関係は、学びあいを刺激しあう友情の関係である。競争とか、勝ち負けの世界ではないのだ。
「~したい」というあこがれ(願望)が学ぶ意欲をかきたてる。相手の学ぶ気持ちに火をつけること、これが教師のほんとうの役割だ。共に成長し合うのだ。
教師は、あこがれを目指して飛ぶ矢であり続けたい。
斎藤孝さんの考え方に賛同する。
この四ヶ年がわたくしにとって
どんなに楽しかつたか
わたくしは毎日を鳥のやうに教室で
うたつてくらした
誓つて云ふがわたくしはこの仕事で
疲れをおぼえたことがない