読書逍遥

第24回『詩人与謝蕪村の世界』森本哲郎著

冨田鋼一郎
森本哲郎著
『詩人与謝蕪村の世界』

『詩人与謝蕪村の世界』森本哲郎著

[蕪村受容の歴史]

蕪村の俳句は若々しくユーモアがあり親しみやすい。芭蕉が水墨の山水画だとすれば、蕪村は色彩豊かな油絵のようだ。

しかし、蕪村の魂にたどり着くことは容易ではない。今でこそ芭蕉と並ぶビッグネームだが、世の中に受容されるには長い時間が必要だった。ここに3人の貢献者がいる。

まず、明治の正岡子規。子規によって「発掘」されるまで死後100年以上忘れられていた。

次に、萩原朔太郎。昭和はじめ『郷愁の詩人与謝蕪村』によって、詩人の鋭い感性で魂の根底には、故郷を強く思う気持ち「郷愁」があると喝破してから蕪村ファンが一気に増えることになった。

そして最後に森本哲郎。『詩人与謝蕪村の世界』が昭和44年に出版されて、ようやく蕪村は世の中に「心から理解」されることになった。

子規によって「発掘」、朔太郎によって「理解」、そして森本哲郎によって「心解」。おかげで我々は居ながらにして蕪村の芳醇な世界を自由に散策することができる。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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